自分たちの立ち位置

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 最近、観光関係の話題に触れるときに、いくつかのキーワードがあります。一つは、インバウンド。そして、もう一つは富裕層。
 この「富裕層」の捉え方について、世の中的な見方と現実との間に、結構な差異がありそうなだなぁ、と感じたので、その点について書いてみたいと思います。

もはや「中流」ではない日本の一般市民

 さて、皆様はご自身がどのくらいの所得階級にいると思いますか?

  「普通」「平均」が好きな国民性の日本のことですから、大部分の方が「普通でしょ?」と答えると思います。
 格差社会になりつつあると言われつつも、日本は格差の少ない国です。今日食べるものにも困る、という人も多くない代わりに、世界レベルの富豪も多くないのがこの国です。
 そして、この失われた20年で、世界から取り残されてきたわが国。20年前、我が国は「一億総中流」と言われてました。その時の意識が強い人が多い。
 しかし、この20年、足踏みをしていた日本と違い、世界は発展し続けて来ました。まだまだ日本にしかできないこと、日本にしかない技術はたくさんありますが、我々一般庶民の暮らし向きというのは、世界と比べてどうなのでしょうか。

 例えば、観光の話題でよく出るフレーズ。「海外の富裕層を呼べばいいんじゃない?」と簡単に言う方がいる。
 この「海外の富裕層」って、どのレベルの人だと思ってますか? 例えば、我々日本人が下に見がちな中国の富裕層って、どれだけの財力を持ってると思いますか?
 恐らく、多くの人の意識だと、「そうは言っても中国だから、日本人のちょっと金持ちと同じくらいだろう。」と思っているのではないでしょうか?

 それ、間違ってますから。
 中国の富裕層というのは、ピンからキリまでいますけど、日本に観光に来て、湯水のようにお金を使ってくれる「かもしれない」富裕層っていうのは、王侯貴族レベルの財力を持ってる人たちですから。
 まして欧米の富裕層なんて言ったら、プライベートジェットを乗り回して世界中好きなところに、好きなときに行ける人たち。僕たち日本の一般庶民の想像を遥かに超えた雲の上の存在です。

 そういう方たちを呼ぼうと思うなら、インフラも人もサービスも、日本で考えうる超一流を揃えても「まぁ旅行先だから不便でも仕方ないよね。」と言ってもらえるかどうか、というレベル。まして「郷に入らば郷に従え」「ここは日本だぞ」なんて言葉が通用する相手ではないのです。「中国人だから、それっぽい安物を与えておけば満足するだろう」だなんてとんでもない。

自分たちは「中流」ではないと気づこう。

 富裕層について書きました。「そんなの一握りの特権階級でしょ」と言われると思います。その通りです。
 では、豪華客船で日本にやってくる外国人たちや、普通に日本を旅行している外国人たちはどうでしょう? 自分たちと対等と思ってませんか?
 まして、東南アジアから来た方たちを自分たちより下に見てませんか? それ、大きな間違いです。

 20年前、我々日本の一般庶民は、一億総中流と言われたとおり、世界的に見れば中の下から、羽振りがよければ中の上だったと思います。
 しかし、20年間世界の発展から取り残された我々は、今や下の上だと理解しないといけません。日本国内で金持ちと持て囃される人とて、中の下程度。中の上にランクされる人など、数えるほどしか居ないのではないでしょうか。

 そしてもう一点、一億総中流の社会で行きてきた僕たちにはなかなか理解しにくい考え方。グローバルでは「階級」「階層」というものがあります。上流階級、中流階級とか、労働者階級とか。
 例えば豪華客船に乗って来るような外国人観光客は、中流以上です。その人たちから見て、僕ら現地の住民は労働者階級です。「外国人に馬鹿にされた」と怒る前に、その事実を受け入れましょう。
 普通に飛行機で入ってきている外国人観光客でも、個人や家族、グループで来ているような人たちの所得水準は、「たぶん自分たちより上」と思って間違いないと思います。

 その前提に立たないと、インバウンド向けの観光施策なんて組めないのです。特に富裕層向けなんて軽々しく考えられるものではない。非常にハイリスク・ハイリターン案件になります。

 この20年間、世界から取り残されてきたのに、それを知らない日本人の考え方。それを正すことが、観光立国・日本を考える上で大切ではないかと思うこのごろです。

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