中国が日本メーカー製マスクの出荷を認めない理由

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 先日からこの問題がチラチラと報道されています。(そしてマスコミはあまり積極的に報道してないように思うけど。)
 要は、中国国内にある「日本企業の所有する工場」で「日本向け」に生産されたはずのマスクが、中国当局に抑えられて日本に出荷できない、という事態。

 この問題って、「外国に頼る危険性」とか、保守層からは「敵性国に頼る危険性」なんてことが言われているけど、実はこれって外国だからでも、敵性国だからでもなくて、「中国が共産主義国家だから」ということが根底にあるんじゃないかと感じたので、少しそのことについて書いてみたいと思います。


写真提供:フリー写真素材ぱくたそ

もともとは共産主義国の中国

 地上から純粋な意味での社会主義国家、共産主義国家が姿を消して30年近くが過ぎています。共産主義国家とは、どういうものかを忘れてしまった人も多いかもしれません。

 共産主義と我々資本主義の違いは、いろいろありますが最も大きな部分として「個人による財産の専有を認めるか、否か」があります。

 生産設備や建物、原料やそれによって生み出された製品まで、全て「誰かの所有物」であることを、僕たちは当たり前と思ってます。でも、これは共産主義社会においてはもともと当たり前ではない考え方なのです。

 共産主義経済と言えば「国家による計画経済」「国営企業、国営農場での生産」「財産私有の制限」あたりがキーワードとなってきます。中国も本来的にはそういう社会制度を持っていましたが、ソ連崩壊など、共産主義国がうまく行かなくなってきた1990年代から「改革開放」が進められ、特例として部分的に資本主義経済のしくみが取り入れられて行きました。その結果生まれたのが、今の中国です。

マスク出荷差し止めは、共産主義への回帰?

 今回のマスク騒動に話を戻しますが、新型コロナウイルスによるパンデミックという国家的緊急事態に陥った中国が、緊急対応を模索する中で、「特例」であった「資本主義的しくみ」を部分的に停止して良いと考えている、というのは十分に考えられることです。

 本来の共産主義の考えに基づけば、中国国内にある建物や生産設備で、中国の原料を用いて生産されたものは、本来すべて中国人民のものです。外国企業が「所有」していたとしても、その「所有」はあくまで部分的な特例措置。緊急事態においては停止させられる。

 そこは「財産権」を「社会を支える根本原理」に据える資本主義経済とは最も相容れない部分ですが、「中国は、そういう国である」ということが今回、改めて示されたと言えるのかもしれません。

改めて浮き彫りになったカントリーリスク

 となると、中国に生産拠点を置くリスクというのは、単に「外国に頼るから」とか、「中国が敵性国だから」ということから来ているのではないということになります。「中国は共産主義国だから、時として財産権を尊重しない場合、侵害される場合ががありえる」という最大級のリスクが今回、炙り出されたことになりますね。
 なんにせよ、日本企業の大事な財産が、不当に制限・搾取される可能性のある国でビジネスをしますか? ということを今一度、しっかりと見つめ直す必要があると思います。

“中国が日本メーカー製マスクの出荷を認めない理由” への1件の返信

  1. 御意にございます。
     中共はソ連の失敗から学んでいるのです。共産党一党独裁を維持し、市場経済を持ち込んだ社会主義市場経済です。
     自由資本主義経済陣営は、市場経済と言うだけで騙されています。
     日本製鉄の業績悪化も、中国のなりふり構わない増産のあおりを喰っているのです。中共の鉄鋼産業は、かつて日本の資金と技術供与で作られた「宝山製鉄所」から始まりました。
     ほかにも、人件費が安い海外の製造を移したので、自給率が下がり、いざと言う時に国内調達ができず、苦しんでいます。継承されずに失われた技能や技術もあり再び国内で製造することが出来ないものも有るでしょう。
     これこそが共産党一党独裁下の「社会主義制度」と「市場経済制度」の真の「一国二制度」です。

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